SBRCセンター長挨拶

星野 裕志
星野 裕志
Hiroshi Hoshino

 世界的なコロナウイルス禍の中で、国と国とを隔てるボーダーの存在が、改めて強く認識されているように感じます。より良い世界への変革を目指し、人類と地球の繁栄のための行動計画として掲げられた持続可能な開発目標(SDGs)のように、グローバルな課題に取り組む視点が、一時的かもしれないにせよ、薄れて来ていることが危惧されます。

 一方で、ノーベル平和賞受賞者であるムハマド・ユヌス先生は、「No Going Back(過去の世界には戻らない)」として、様々な社会的な課題は旧来の視点や手法では解決不可能であり、新たな枠組みが求められていると言われています。その一つが、ユヌス先生が提唱されるソーシャル・ビジネスであり、市民、行政、企業などの様々なセクターが、単に自己の利益を追求するだけではなく、社会貢献と利益を得る活動を主体的かつバランスのとれた形態で行う考え方です。その実現のためには、セクターや国を超えた広い連携が求められます。

 九州大学ユヌス&椎木ソーシャル・ビジネス研究センター(SBRC)は、バングラデシュのグラミン・センターとの提携の下で、2011年9月に設立され、ソーシャル・ビジネスに関する教育、研究、調査、普及とインキュベーションを目的とした活動を行っています。そのひとつとして、2012年から開催しているYYコンテスト(Yunus & Youソーシャル・ビジネス・デザイン・コンテスト)では、新たなソーシャル・ビジネスの創出を目指して、大学生や社会人が、4ヶ月間にわたってメンターからの伴走型の指導を受けながら、プロジェクトを立ち上げるプログラムです。2019年からはSDGs ソーシャル・ビジネス・ネットワーキング・ラボとして、新たなソーシャル・アントレプレナーの皆さんへのフォロー、企業との連携の機会の提供とソーシャル・ビジネスの啓発を行っています。設立から9年間の間に、ソーシャル・ビジネスに対する社会の認知と必要性の理解が、急速に高まってきていると感じています。

 さらに、2011年に福岡市によるアジア初の「ソーシャル・ビジネス・シティ宣言」、バングラデシュにおける、グラミン・ユーグレナ(当初は雪国まいたけ、現在はユーグレナに移行とユヌス・センターとの合弁会社)、グラミン・ユニクロ(ユニクロとユヌス・センターとの合弁会社)、グラミン・フェリシモ、グラミン・サンパワーなどの設立や、国内においても28のソーシャル・ビジネス企業の立ち上げの支援など、市民、行政、企業によるソーシャル・ビジネスの推進を行っています。

 新型コロナウイルス鎮静化後の世界は、また元の枠組みに戻るのでしょうか。この試練の中で世界が得た新たな学びや価値観、様々な創造的な手法が、今まで解決できなかった課題の解決に貢献できると信じています。